2018年の春から有機栽培の無農薬の畑を自分で耕してます。
今年で7年目だから、小学2年生ぐらいか。まぁ「慣れた素人」というところかな。
とても楽しいのだけれど、何が楽しいのか人にあまり伝わらない。ま、自分の話をするのは昔から下手なので、当然といえば当然ですが。
「畑をやってます」って言うと、たいがい「どんな野菜を作ってるんですか?」と聞かれます。夏はキュウリ、ナス、トマト、ピーマン、オクラ、枝豆・・・なぁんていろいろ言ってみても、つまらない話。どれもスーパーに並んでてすぐ買える。だからといって「子持ち高菜」や「コールラビ」などと言っても伝わらない。で、無難な野菜をひとしきり申告すると「わざわざそんな面倒で大変なことやるなんて、変わってる人なのね」という空気が漂ってくる。相手が友人だろうが、身内だろうが、仕事仲間だろうが、みんなそう思うらしい。空気ってちゃんと伝わる。
確かに、毎週末のたびに畑に行くのは面倒くさいし、疲れる(「毎週行く」という時点で驚く人も少なくない)。
陽にあたるのって独特の消耗があるんだよね。洋服の上から背中が日に灼けるぐらいなので、顔にはシミも増えたし、スキンケアもひと手間増えた。
畑はタダでは使えないので、利用料を払っている。
苗や種はもちろん、育成に必要な道具なども自前で揃えるし、車がないからそれを電車に乗ってホームセンター等へ買いに行き、畑まで電車で運ぶ。
畑には虫もいるし、たまに連れて帰ってきてしまうことも。
さらにここ数年は天候不順で一筋縄ではいかず、素人のワタシは毎回が「チャレンジ」。
もちろん、本やネットで野菜の勉強も必要。
畑でたくさん採れるときは、プロもよく採れていることが多いので「買った方が安いじゃん!」ってことも多々ある。
これらの説明を割愛して「大変なんだよ~」なんてニコニコと言おうものなら、最近の大人は自分も含め想像力欠如が顕著なためおおいに真に受けられ「そうでしょ。いいこと何もないじゃん。ご苦労な人ね。生活に余裕があるのね。自然がよっぽど好きなのね」というレスポンスのどれかでおわり。でも、農業や自然に関わることがここまで異世界扱いになると、最近では日本の将来は大丈夫なんかな、という気になる。
なので畑の良さを何回かに分けてお送りしましょう。
よく言われるのは、心が病んだ人に畑はいいよってやつね。
あれは、生き物をかわいがりながら、育っていくのをを実感することが大事なんだそうで、自宅の観葉植物でも代替できるらしいし、認知症予防にもいいらしい。でもそれだけの理由でいきなり始めるのは大変だろうな。
自分の実感では「音」の多様さがいい。もちろん電子音は一切ない。都会だから沿道で車はばんばん走ってるのでうるさいけど、植物に埋もれていると別世界の静けさがある。
草が揺れるザワザワという風の音。耕した時の、土のきしみ。草をむしったブチッて音。土の上を歩くゴム長のボコボコ音。水がマルチシートにかかるザアッていう音。虫が草の上を移動するカサカサ音。風でカラのじょうろがゴトゴト転がっていく音や、シャベルが鍬とぶつかるカチンという金属音。そこに、暑さや寒さの中で荒くなる自分の呼吸音。
音といっても身体を伝って届く振動があるし、視界の外側にある気配を察する感覚も使う。それらが積み重なって、心にじんわりと届く感じが気持ちいい。
加えてうちの畑には立派な鶏小屋があって、毎回「クックドゥードゥードゥー!」と烏骨鶏が迎えてくれる。
土から出てくる「根切り虫」なんかはいいたんぱく源のおやつになるらしく、見つけてはあげていると、最近では催促される(ような気がする)。
分かりやすく言うと「ヒーリング効果」っていうのかな、そういう良さがあります。
それと、畑びととの交流。
名前も職業も家族構成も知らないけど、毎週逢って、声をかけあう関係がある。
調子はどうですか、今年はこれがいい感じ、あれが全然ダメ、虫が多い、まだ実がつかないね、などなど。今日は暑いですね、お気をつけて。お先にあがります。みんないい笑顔で帰っていく。こういうゆるいつながりが何年も続き、姿を見かけないことが続くと、ちょっと心配になったりする。
畑の区画をどのように使うかにも人それぞれの個性があって、面白いくらいみんなバラバラ。性格までわかる。
こういうのってイマドキの言い方だと「居場所」ってことなのかな。子育て中の奥さんもいれば、家でやることがないおばあちゃんとか、働き盛りのお兄さん、リタイア組のおじさんまで幅広い。
そしてみんな、年々血色がよくなっていき、体が締まって、ガタイが良くなっていく。畑仕事が板について、似合ってくる。動きに無駄がない。
うちのオットも痩せてヒョロヒョロだったけど、細いなりに大きくなったし、よく寝て、よく食べるようになり、頭痛薬と胃薬がほぼ不要になり、我々は風邪をひかなくなった。
畑ライフのキモは、やはりこまめに足を運ぶこと。
日々育つ野菜は基本的に自力で育っていくけど、ちょっとしたヘルプがあるだけで違うもの。混んできた葉を切ったり、ツルの向きを麻紐で誘引したり、身が付き出したら追肥したり、そんなに重労働なことはあまりない。これが月に一度ぐらいしか行かないと、特に世話のいらない野菜だけを育てるか、4週分の大変な作業を覚悟するか。
波長があう人たちとは自然と連絡を取り合うようになるし、数年に1度の対面でもブランクを感じない。違う畑環境の人ほど、呑んだり、おしゃべりしたりも楽しいし、食いしん坊や酒好きもけっこう多いかな。
逆にダメなのは人脈作りのために畑に来る人。人的ネットワークの足しにしようとか、畑で出会う人を通じて何かトクしようとする人が、わりと若い人に多いんだけど、そういう下心ってすぐバレますから。大人は知らん顔するけど、ご注意を。
↓これは2022年のうちの畑動画です。ご参考まで!