借りている畑を「契約更新しない」と決めたのは、締め切りとなる3月末。
今年の桜の時期は本当に忙しかった。
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私が借りていたのは「シェア畑」。運営会社から作付計画から苗から肥料も用意され、道具もあり、アドバイザーが現地に居て聞けば何でも教えてくれる。初心者向けの至れり尽くせりのサービスで、失敗もほぼないけれど、密集した区画割りのために隣とは足の踏み場もないくらい近い。1契約あたり4.8平米の中で野菜の世話に熱中していると、たびたびオットに頭突きを食らわせたりドンケツで倒されたりして、あれ？ちょっとまてよ、ハタケってこんなちまちまとセセコマシイものだったか？と思うようになった。
この、ドンケツ1区画に年間約15万円。おっと「野菜に15万円！」と驚くなかれ、3年目には物足りなくなって隣をさらに借り増ししたので、昨年の支出は2倍。このわずか9.6平米に長期契約割引分をさっぴいても年間約25万円の支出というのは、高級食材を毎月取り寄せてもおつりが来そう。
しかも、始めた2018年当初はアドバイザーも農家のおじいちゃんたちが中心で、頭と体をバランスよく使って生きてきたと思わせる、穏やかで頑健そうな彼らの含蓄ある話が面白かった。気づけばそういう人たちは姿を消し、夏休みの記録だのフォトコンテストだのリースづくりだのと（どうでもいい）イベントがにぎやかで、それも利用料の元になるコストだと思うとひっかかった。運営会社が新しく手を組んだ企業が、ザ・昔ながらの大手企業なのもガッカリで、バカ高い利用料がさらに惜しく思えた。
ちなみに同じ野菜づくりでも、畝（うね）にはその人や家の性格がくっきりと表れる。3年も通うと利用者同士も顔を覚え、老若男女を超えて声を掛けあったり、褒めたり、相談したり、いないときにこっそり見に行って研究したりしていた。そういう交流が途絶えるのは正直もったいなくて悩んだけれど、背に腹は代えられないし、さりとて逢う皆さんに「うちは6月でやめるんです」と言って歩くのもどうかと思うので、このまま挨拶もせずに消えていくんだろうな、と思うとやるせない。
私がやっているのは、完全無農薬の有機栽培畑なので、園芸コンテンツで出てくるような化成肥料は一切使わない。益虫もいれば害虫もいて、見つければ捕殺するし、虫よけには手製の唐辛子焼酎を持参して散布する。蜘蛛やカエルはかわいく思えるようになり、天気予報は日差しや風も気にするし、「この時期」の天候は何年分かが頭に入っている。海へ行ってきたような日焼けの跡がTシャツ越しに背中にくっきりとつき、二の腕には力こぶができたと気づいたとき、あれ？初心者向けサービスを離脱してもいけるんじゃないか、そんな気にもなった。
そして移転先をさがす。週末のたびに下見に行き、現地に立ってその感触を確かめた。その後、見学依頼を出して現地で話を聞く。早く決めないと夏野菜の土作りに間に合わないと焦りつつ、電車で行けて、道具を最低限貸してくれて、何よりも安くて広いマイファームに決めた。15平米で13万円ちょっとなので、同じ料金で3倍の広さ。しかも借りた後に実感したのは、畑のオーナーさんは同じ敷地内で自分たちの農作業をしているし、近所にJAがあって道具はほぼ調達できるので、ここに決めて、すごくよかった。この話はまたおいおい。
一通り手続きを終えて、改めて兄貴のようなアドバイザーさんにシェア畑の離脱方法を相談し、昨秋に発注した夏野菜の苗は一通り植えて行ってあげることにした。私が始めたときも夏野菜は植えてあって「畑なんか面倒くさい」とさんざっぱら迷惑そうな顔をしていたオットが、収穫した野菜を食べて一変したからね。お世話になった感謝の気持ちを込めて、マイファームを手掛けながら6月まではシェア畑にもいくけれど、4月からの畑のハシゴは思ってた以上にキツイんだわこれが。声も出ないほど疲れて果てて帰ってくる土曜日が続いていて、ブログも止まってしまう。もう少し体力が復活したら、新畑リポート復活させます。
