全く何の面識もない1ファンだけれど、今回の訃報に接して驚いた。ニュースでは享年70歳、がんの治療中とあった。70歳は若い。私の母も69歳までは元気に生活していたが、足をぶつけたらその傷が治らなくなり、いろいろあって入院したら、検査づくしで寝たきりになった。そして、退院後の生活を楽しげに語っていた時から数えてわずか3ヶ月後には帰らぬ人となった。訃報にふれた後にネットを検索して見つけたご本人の闘病記は、相変わらず軽快な文章だけれどもナカナカの壮絶さで、遺されたご家族はさぞ大変だったのだろうな、と想像する。

初めて橋本治さんの文章に触れたのは1999年のこと。当時の業界紙「広告批評」に寄せられた「ああでもなくこうでもなく」のコラムだった。梅宮アンナが「男と別れるのにちょうどいい日」だと思ったことを入り口に「女にとっての愛情とは、自分がつぎ込んだ分以上に返ってくるという見込みがとれないと気づくと、損した額に目をつぶり傷が浅いうちに引き上げようとする投資と同じ」というような話だった。
難しいことを難しくいう人の内容を理解できないと、難しい内容を話し合う資格は持てないとアホな私は思い込んでいたので、あれほどわかりやすい文章に出逢えたことに驚いたし、失礼ながら、これが知性か!なんて勘違いしたりした。叱られそうだ。でも読んでいてひとつひとつが腑に落ちて気持ちよかったし、おだやかな文体で語りかけるように大人の知恵を示してくれる素敵なおじさまという印象だった。ああいう大人が一人でもいてくれることが、大げさだけれど、心の支えだったのに。ほんとうに惜しい方がまた一人居なくなってしまった。先にいってくれてもいいのに(ここは敢えてひらがな)、と思うおじさまも世間にはまだいっぱいいるというのに。


私はまもなく「知命」を迎えるけれど、これからの世代を生きるうえで持つべき心みたいなものが見つけられず、無力感に襲われながらあれこれと考える日々だった。そして浅はかにも、これから見つける「何か」を手に入れるためには、今までの「何か」を替わりに捨てなければ、もう両手がいっぱいだ。と思い込んでいたけれど、橋本治さんの「負けない力」を読んでちょっと恥ずかしくなった。いざという時に使えるのが知性であり、私はまだ自分で心配するほどのものは何も手に入れていなかった。

ご実家が近いというのも知って、どこかですれ違ったりしてたかもしれないのに。もう少し長生きしていただいて、オリンピック後の日本についてどう語るのか読んでみたかったな。

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かろうじて買えましたが、書店に無いようで値上がりしています。
出版各社の方々、過去の本が結構手に入らなくて書店をウロウロしています。
きちんと売り上げになるように新品で買いたいので、重版おねがいします。

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