改めて壊れた自転車を眺めてみると、「凶を引くのは自分のメンタルを試されているのだ」と言うまでもないことのような気がしてきた。どうせ私のことだからうっかりどこかにぶつけてヒビでも入り、そうとも知らずに乗り回して、部品の自重で下がっただけでは・・・。
自転車屋さんでは、こちらの心象とは驚くほど違った反応だった。
お店の人に説明しても「あーあー。はいはいはい。えーえーえー」の相槌によって聞き流され、破壊部分に目がくぎ付けになっている。話してるそばから手を出して今にも修理を始めそうな気配。
なんとか静止して聞き出したところによると、パーツは買えば5~6千円はするだろう、やるなら両輪単位になる、同じデザインはもうないかもしれない、手配すると1か月ぐらいかかる。最後のふたつを聞くころには、お店のお兄さんの態度にも「パーツ購入はやりたくない」という気持ちがくっきりと表れてきて(どうしてか不明)「2時間くれたら直してあげるから」という話になってしまった。
申し訳なさそうに「今はちょっとできないんだよねー」という。
「今?今って言った?いまどき、「今」やってくれる商売ってあるんですか!」と心の中で驚いてつい喜んでしまい「いやいや、2時間ぐらい全然いいっすよ」とウッカリ返事したせいで修理に合意したことになった。
まぁこういうのは専門職のいうことに従っておいた方が無難だろうしね。そう思いながら2時間時間をつぶした。
そして仕上がってみれば、涙ぐましい努力の跡が伝わってくる仕上がりだった。
まっすぐピシッと貼られたビニールテープの二重線は、ちょっとしたデザインに見えなくもない。実家でお父さんに直してもらったような気分になったが、直してくれたお兄さんの笑顔とまっ黒な指と手を見て、父の仕事よりはちょっと上等かな、と思うことにした。