パンデミックの3年間で読んだ本 その11

B!

2020年からのパンデミックの3年間で読んだ本を少しずつ紹介しています。時系列は飛び飛びですが、ジャンルで寄せて整理しています。

 

自然布 ―美しい日本の布―  amazon→

covid19とたたかう3年の間に50代になってしまい、人生ちょっと早くねぇか、と感じつつ。
誕生日月は紀伊国屋書店のポイントが二倍になるので、前から気になっていた本を奮発して買ったのがこちら(セコイ話ですみません)。

 

「自然布」というのは、植物などの繊維から糸を紡いで布にしたもののことを言うようで、化学繊維に慣れた身にはもう衝撃的な美しさ。この本で紹介されていたのは「オヒョウ布」「苧麻布」「シナ布」「大麻布」「葛布」「藤布」「太布(たふ)」「紙布」「芭蕉布」「木綿布」。
武士の袴や裃などの装束、野良着の下に着る“たっつけ”、アイヌのアットゥシの晴れ着など大切に保管されていた布製品が美しい写真で紹介されています。なかでも特に感激したのは、使い込まれたたっつけ(シナ布)の美しさ。腰紐で巻く立体レギンスみたいなデザインで、膝や太もものすり減るところはこぎん刺しのような装飾で補強されている。「今これが売られてたら私、買って仕事で履きます」というぐらい素敵。

 

かれこれ20年近く着てる自分のTシャツ。毎年「もう捨てどきかな」と思いながら、肌触りのシャリ感とヨレヨレの柔らかさが絶妙で捨てられなかったのを思い出し、品質表示を見ると「麻100%」。わっ!こういうことかも!とテンションが上がる。くたくたになるほど家で洗い込むと、こんな風合いに出会えるとは(「ヨレヨレ」が瞬時に「風合い」に変換)。
昔の庶民は食べさせるより着せるほうに苦労したようで、いい生地を手に入れ、仕立てては子に着せて、サイズが合わなくなれば肌着や布団などに作り替えてと、布は長く大切に使ったらしい。私も子供のころ祖母が仕立てた夜着(よぎ)と呼ばれる布団で寝てた。あぁ、懐かしい。

 

現代の洋装では、水洗いは繊維が傷むし型くずれするからドライクリーニングが主流。でも昔の体に巻く衣類は関係ないし、水洗いした時のサッパリした気持ちよさは体が知ってる。昭和になるまで芳香剤や柔軟剤もなかったから、水で洗い、繰り返し使い込むと、こういう美しい生成り色が出現するのかなぁ。先日、葡萄蔓のカゴ編み職人が「水道水にすら通してない(湧き水)」と言っていたけれど、水も奥が深そうだ。

 

よく写真でみる木綿のふわふわした「綿花」は、「花」と書いても「咲き終わった種」なんですね。畑で野菜を育てていると、収穫しないで放置しておくと種ができて(自家栽培だと翌年植えたりも)もし鳥などに実を食べられても、フンに交じって種が地中に落ち、また育つという循環が自然界にはあって、こぼれ種が妙な場所で育ってるのも「畑あるある」。うちも畑で綿花を一度育ててみたいものだけど、まぁ布になるほどの量はとれないだろうな。。。

 

「麻」とは総称で種類がいくつかあり「リネン」「苧麻」それと「ヘンプ」。ヘンプは強くて丈夫、耐久性や通気性に優れた繊維だけど、なんせ「大麻」なので、日本ではたとえ草きれでも持ってるだけで逮捕されてしまうのは残念。
紙の原料の楮は漉くと和紙になって、織ると太布になるそう。これも意外。植物を洗い乾燥させ身にまとってきた貴重な歴史、絶やさずに次世代につなげていけたらいいな。

 

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