アイデアパンチは「企画から実制作へと流れで請け負える、ウェブサイトと広告の製作会社」として広く皆様へ紹介している。けれども、実際のところ「企画からやります」とうたう同業他社も少なくない。彼らの多くは、売りたいものを資料にまとめて持って行くだけのことを「企画提案」と呼び誤解している人も多いのが実態。そのような人の「企画」と一緒くたにされてはかなわんと常々思っており、見た目の“差別化”を図るためにではなく、属性がそもそも違うのだということを伝えるための「自社アピール」に創業以来一貫して努めている。
その流れでキーワードになっているのが「考える仕事」である。
これは、簡単に言うと世の「PDCA」のことを言ってるだけなのだが、特にPLANに対する取り組みには力を入れている。
企画という作業は「自らが持つ視点を意識的に広げ、幅広く持つ」ところから始めないことには、企画内容という「照射される領域」もおのずと狭くなるわけで、自分以上に自分を広げるためには、あらゆる価値観を否定しないタフネスさと、合理的な解釈を見い出す知性と、展開できる行動力が必要だ。この力は残念なことに自己の内なる努力でしか得られない。他人から「自分」と「自分以上」の差分を計れないからだ。だから、悪く言えば自己満足にも陥りやすく、難しい。
一朝一夕では難しいことだが、他人のいい例を参考に取り込みながらコツコツと習慣づけることで自分の力に変えられると思っている。しかしこの作業には本人の持つ素養がかなり重要である。これは学歴でも職歴でも判らない。今の私には、その人と会話して、思考回路を感じ取ることでしか判断できない。だから大事な場面ほど逢って話す、これが私にとっての原則になっている。
難しく書いたけど、そんなにミクロの確率で言ってるわけではなく、一定割合でそういう人はいて、弊社が長年付き合っている内外のスタッフはだいたい上記の素養がある人たちだと思っている。
今回日本仕事百貨さんに求人広告を出したのだが、私がインタビューで答えた「考える仕事」というのがキーワードになって、実に読みやすい記事を書いてもらった。が、記事が秀逸過ぎたのか、一読して気持ちがフワ～っと舞い上がった人の応募が多数あって、ネットでの申し込みにも関わらず電話してくる人や、面接だけでもやってほしいような相談も結構あった。しかし蓋を開けてみれば、会社を辞めることを慎重に考えたいとか、自分の適性にはあわない、などの理由で辞退される人だらけで誰も採用に至らなかった。
自社の恥をさらすようだが、今年の春から求人広告の出稿はこれで二度目。応募数は合計すると200人近く、一人で対応するのは業務を圧迫する。けれども頑張って応募者皆さんの人生それぞれを想像しながら対応したが、だれも採用にならなかった。
私の尊敬する文筆家の故池田晶子氏の名言に「考えるということは、あれこれ思い悩むこととは違う」というのがある。私が表現すると陳腐になるが「考えるということは最も論理的な作業であり、究極は自己と対峙すること」というようなことを書かれている。その言葉を借りれば、応募くださった皆さんは「あれこれと思い悩むこと」に興味があったように見えた。
「自分の身辺と将来設計を整理できる力」が最低限あって初めて、次に入社する会社を「選ぶ」作業が成立するのだし、それだからこそ、採用選考には自由に参加（エントリー）できる権利があるのではないかと思う。その権利を雇用側は尊重すべきで、年齢や性別で一方的に選考するのは論外というのが雇用機会均等であろう。また雇う会社にとっては、自社の方針や思想・社風にこの応募者は馴染めるかということを、その人の人生に対する責任をもって、きちんと判断しなければならないと思う。
（面接の場で、うちじゃないほうがいいと思うよ、と進言することも実は結構ある）
うちで一緒に仕事をする人は、私の個人的な好みで選んでいるわけではない。
会社の経営や、社の方針というのも、個人的な嗜好で組み立ててはいない。
もちろん、私が作った会社であるから、飯島愉子の経験や考え方がベースにあるのは否定しないけれど、私人としての判断は弱小私企業の割に出ていない会社だと思う。
けれども上に長々と書いたようなことの、きれっぱしだけでもピンときてくれる人じゃないと、うちでの「考える仕事」は無理だと思う。そして、知性のマッスル化へチャレンジして、楽しめるような人であれば、うちの仕事は本当に面白いはずで、それが製作物へと実現化していく過程は、厳しくも楽しい時間であるはず。
それでいて、健康や食に興味や知識のある人が入社してくれやしないかと、日々、ドアノックを待っているんだけどなー。
（飯島）
