パンデミックの3年間で読んだ本を少しずつ紹介しています。時系列は飛び飛びですが、ジャンルで寄せて整理しています。
蝦夷地別件 上・中・下 amazon→
10年くらい前かな、「坂の上の雲(司馬遼太郎)」を夢中で読んでいるけど、内容が濃すぎて心がついていかないという謎の経験をした。こんなに没入してはまずいという無意識のブレーキがかかるのは、「好きなものは最後に食べる」性格のせいかな。気持ちが急いてストーリーの先が気になるのに、読み進む量がちょっぴり、というランニングマシン状態にぐったりバテてしまって、1年あけてクールダウンしてなんとか読み終えた。
この「蝦夷地別件」がそうならないよう、努めて冷静に、ペース配分しながら読み進んだ。
前掲「アイヌの権利とは何か」を読んだ感想を北海道の友人にメールで綴ったところ薦めてもらった本。内容どころか存在すら知らず「知らない」ことが人生の見聞をいかにせばめるか50歳にして痛感。600ページ近い文庫本×3冊に挑むも、上巻は登場人物がいっぱいで、行ったり来たりしながら1か月ぐらいかかった。
私は「この続きは次週」という週刊連載的なものが大の苦手で、「待たされるくらいなら止める」ことも少なくないし、ネタバレ文で気が済むこともよくある。おそらく創作物の意図的な煽りが苦手なんだと思う。スプラッターな描写も苦手で、読みながら吐くこともありなるべく避けたい。我ながら面倒くさいので最初はおそるおそる読むも、物語の筋が見え始めてからはスピードも加速し、中巻は約半月で、下巻のころにはもう止まらず文字通り“寝る間も惜しみ”3日で読み終えた。
北海道で何があったのか、つくづくよく分かった。
私は「スジを通す」ことは大切だと思うけれど、むやみにバランスを取るのは正義だと思わないことが多い。簡単な話に例えると、お姉ちゃんに買ってあげたんだから、妹にも同じものを、みたいな話。あるいは、あの人がいいなら、この人もいいはず。とか。
逆に、Aを認めなかったのだから、Bも認めてはならない。というようなやつとか。なんのこっちゃ?と思うでしょうが、読後感想なので。。
「おしなべて平等に」というのは、多様性を認めることとは真逆の力が働くと思うんだよね。
この物語には自分のご先祖が暮らしていたとおぼしき地名は全く出てこず、あまりのご縁の無さに拍子抜けしたけれども、こういう場面に出てこなかった子孫の末裔(私)だからこそ、私の心にこういうマインドがないんだな、と腑に落ちた気も。。
蝦夷地別件 上 船戸与一 ※Kindle版
蝦夷地別件 中 船戸与一 ※Kindle版
蝦夷地別件 下 船戸与一 ※Kindle版