父と母を見送ったときのはなし

B!

今回は、あまり楽しい話ではない。
私は32歳で父を、42歳で母を見送った。これが早いのか、普通なのか、わからないけれども、なんとなく漠然と「家族の大半が、もうこの世に居ない」と寂しく思っている。

父は食道がんと胃がんを患い、65歳まであと2日という日に他界した。最近は珍しくないが当時は64歳で死ぬのは非常に若かった。また、がんといえばよほどでない限り「切除するもの」という時代だったから「ゴッドハンド」を探し、「前進以外に道はなし」という笑えない決死の覚悟で医師を信頼し、開腹手術にのぞんでいたようにみえた。そして術前・術後もじつに生真面目に、病院と医者の言うことに従っていた。

その術後1年目に、今にして思えば家族みんながよくわからないような、たいした根拠もなかったのに「肺に影のようなものがある、予防だから」と言われて放射線治療に踏み込んだ。新人のような放射線技師に不安を抱きつつ、回を重ねるごとに不調を訴えながらも、生真面目な父は自らの足で病院へ行っていた。ある日苦痛に耐えかねて病院を訪れたら、恵祐会札幌病院の久須美という医師に「飯島さんあなたは大したこともないのに大袈裟なんだよ」と諭され、本人がしょんぼりして帰宅したその日の夜に、自宅でザーザーと音を立てるほど血を吐いて、動脈瘤破裂で死んでしまった。

辛かった父の力になれなかったと母は心底悔やんでいて、父のことを思い出して涙しない日がくるまでに丸2年以上はかかったと思う。そのころ私は東京でサラリーマンの身だったけれど、毎晩毎晩母に電話して彼女が話し疲れてあるいは気が済むまでの何時間でも、今日という一日をどう過ごしたかを聞き続けることに費やした。

その母も30代半ばにバセドー病(当時はバセドー氏病といった)を患い、メディカゾール(メルカゾール)などの薬剤をじゃりじゃりとまるで三度の食事のように大量に飲む生活を25年以上続けていた。それが原因かどうかわからないけれども、晩年は足先に血がいかず指先から壊死してくる重度の動脈硬化になった。治る見込みもないまま次々と足指が傷む生活が数年続いて、彼女は痛みに耐えることに疲れ果て、血管を自分の細胞で再生する最先端治療に運命をゆだねて京都の病院へ入院した。

痛みに耐えた数年間で生活のリズムは狂い食事もないがしろにせざるを得なかった母は、既にひどい低栄養になっていて、入院先でたくさんの不調が見つかった。最先端治療に取り掛かる前の検査に数か月を要し、肝心の足治療を目前にして腸穿孔になり、もともと155㎝/40Kgの痩身だったのが、さらに10Kgもやせて手術室から出てきた。そして退院どころか、健康へのメドもたたないまま病院で寝たきり、透析とストーマ生活になってしまった。
他人に迷惑をかけず、美味しいものを少しずつ食べ、自宅をモダンな空間にしつらえ、おしゃれしながら静かに暮らしたかった母にとって、上半身すら自力で起こせない体になって生きる希望を失ったようだった。いくら励ましても頑として食事をとらず、2ヶ月かけてゆっくり衰弱し、そのまま病院で還らぬ人となった。

私の仕事は食についての内容が多い。

理想も現実も必要な「表現の世界」だけれど、一方で個人体験として父や母を見送り、健康というもの、生きるということを考えざるを得なかったこの十数年は、かけがえのない経験になった。
そして実家の生活用品の一つ一つを帰省しては片付けながら、40歳を過ぎてもなお、親の人生に子として触れいろんなことを感じている。

気心がしれた友人と呑んではポツポツと話していたら、あるとき、それを書いてみてはどうかと言われた。
みんな自分の親が健在なうちはピンとこないと思う。でも子も年を重ね、自分の人生の終え方なんぞを考えるようになると、これらの出来事が他人事とは思えないはず。友人は、自分のためにも話を聞いてシュミレートしておきたいといった。

思い出しても気が滅入るだけで、ちっとも楽しくない。でもそうか、こんな話が人様の役に立つならば、と始めてみることにした。とはいえ気持ちの整理がつかないと書きようもなく、、、。具体的なテーマは見えてこないけど、適宜チャレンジします。1960年代、1970年代生まれの「子ども」の参考になれば幸いです。。

 

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