人材紹介会社で働いていた2000年ごろ、自社の宣伝のために雇用側企業へ送るダイレクトメールのクリエイティブをやったことがある。
荒馬に乗りこなす筆画のイラストを使い「血統や戦績だけで次のレースは読めますか?」というコピーを書いた。モチロン血統は履歴書で戦績は職歴書の意味である。馬が従業員なら、さしずめ経営者は馬主、ジョッキーは管理者というイメージ。(もののたとえ、です)
情報化社会になり21世紀の組織は「人ありき」になる。だから、インフラ整備の一環としていい人材をそろえましょう。そのためには「紹介業」というマッチングのプロに頼んでみませんか、というような内容だった。我ながら、本当に先見の明があるわ。
でも、いくら採用側に送るものだとはいえ、経営者に「勝ち馬に乗れ」と言ってるようにもとれて、結構チャレンジな内容だったかもしれない。従業員が見たらムカつくかもしれないよな。作った当時の私はまだ、充分に「従業員」だったけれど。この出来事は出来栄えのいかんより、トンチキ頭でヒステリーな社長が「社運をかけた」ツール制作に私のクリエイティブをすんなり採用したということが大きな衝撃だった。
経営者でなく従業員としてでも「人とどうつきあうか」がいろんな意味でキモになる。
常々そう思うし、機会があればスタッフへ話したりもするが、社内の人間関係にだって営業的センスが必要なんです。貸し借りは武器になるし、武器にしなくてはならないし。
自分より目上の人を動かしたい場合と、部下や後輩を動かしたい場合とではやり方が異なるが、ポイントは、どうやって相手をその気にさせるかだと思う。
だから職場の周囲がアホばっかり、と腐ってはいけない。アドバンテージが全く無いわけではない。組織にも人間関係にも必ずスキがあるから、そこを上手について勝ち馬に乗ってほしいなと願っている。そして反対に、賢い人間はスキを突くのがうまい。それもこっそり、本人にしか刺さらないように突くのがより上等だ。社会人スキル、ってこういうテクニック。
だいぶ前になるが、ちょっと解釈に苦しんだ行動を起こす人がいた。自分はいい人だと全身で伝えたいのであろうと気づき、深追いするのを止めた。これみよがしに振舞うのは、やはりダサいのだ。薄っぺらくて、私は信用できない。
ミエミエのタテマエを堂々と述べることで、さも本音を語っているように見せる人がいて、それに同調しがちな世のきらいが気になっている。人付き合いというものは、もっと繊細で秘するところがたくさんあるべきなのだ。それでいて友達ではなく仕事関係だから、とてもオフィシャルな側面も併せ持っていて、そのバランスを取れるところが「センス」なのだと思う。たとえ人と関わる仕事を長年していても、そのセンスがない人は多い。
人付き合いは「誰かの仕事」ではない。日々仕事する限りにおいてすべての社会人にとって仕事なのだ。
それでいて、うまくいった成果があれほど個人に還元されるものはない。
私の貴重な仲間達には、是非、したたかにいい人間関係を作って欲しいなと思う。