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企画を立てるときに、一番思うのは「落としどころはどこか」です。
これは多少場数を踏んだ人でないとピンとこないかもしれませんが、言い換えれば「何を適えたいという目的でプロに発注してきたのか」を相手の立場になって考えを巡らすことです。
これはモノづくりを請け負う作業にとって結構なキモだと思います。

しかし企業の注文である以上、理屈で推測できることも多いのです。また、具体的な表現の作業に入ればディレクターの個性やモノの見方が多少は反映されていても、各パートの専門家たちの意見が大きく影響して成形していくもの。つまり、ディレクター職なんてのは最初の旗振りだけで、仕事の良し悪しは各パートの専門家たちの能力で決まると長年思っていたのです。しかしどうやらそうではないかも?と、今更ながら思えてきました。

仕事への評価とは、たぶん、間違いなく、依頼主の満足度にあります。
なかには「自分たちの満足がいくものは何か?」すら判らない発注主もいますが、それをアドバイス(提案)してあげるのも我々の業務の一つで、目的を整理し、提案を通して方向を探りあいながら製作は進んでいきます。
その製作物にはデザイナーやコピーライターやカメラマンのそれぞれの全力投球があります。その集合が「目に見える」形になり、その前段階の目的整理作業が正しかったかどうかも、成果物のクオリティと一体となって語られてきました。お陰様で良い評価をいただくことが多い弊社の昨今ですが、それはみんなの全力投球が優れたからだと思っていたし、スタッフにそう感謝しながらここまでやってきました。

しかし最近、全く不意に私の采配についての感想をあちこちのスタッフから同時多発的に語られることが続きました。面識のないスタッフ同士が陰で私をおだてる相談をするはずもなく、社長になると褒められることもめっきり減ったので、嬉しいけど。つまり私の采配ならではのエネルギーが生まれ、その影響は製作を担当した当人にも予測できないもので、完成品は予想を超えてすばらしい・・・という、いったい誰を褒めてるんだかわからんような、有難い内容でありました。

まぁ細かいことは手前味噌なので適当に読み飛ばしてくれて結構ですが、つまり目的を探ることに私ならではの個性が本当に反映されてるとすれば、それは「この人(企業)が喜んでくれるものを創りたい」という、私の半ば押し付けがましい、おせっかいな性格に起因しているように思います。だとすれば、私が経験的に確証を持って言えるのは、いい仕事をするためには「この人に喜んでもらいたい」とまずは思うことであり、その感情は究極に突き詰めると「この人に好かれたい」というものと同じであると思うのです。

恋も仕事も人付き合いも、人生の大きなうねりの中で繋がっているひとつの要素だと思うのですが、私の仕事一辺倒の生活においてもこの人(企業)に好かれるために私はどういう努力が必要だろうかということを考えない時はなかったなぁと感じます。そして全く無意識のうちに、そのような努力らしきことができたのは、とてもラッキーな経験であり、現在の仕事はもしかしたら本当に向いていたのかもしれないなぁと今更ながら思います。

ぜひ、この製作業に身を置きたい人たちには、人や企業に好かれるための努力の面白さを体験してもらいたいし、そこに喜びを見出せるようになってもらいたいと思う今日このごろです。
深夜にこんなことを書いていたらウチの夫が起きてきて「売れない作家みたいな顔して何やってるの?」と言われてしまった。。。むむむ。あたってる。。

 

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