いやーひどい目に遭った、と思い出す経験のひとつにサルモネラ菌がある。いつのまに感染？なんてことはなく、はっきりと「あぁ、あれだ。」とわかっただけに気持ち悪かった。
あれは細胞のすみずみまで若くて健康だった20代前半、旭川に住む親戚の新築祝いで週末に戸外バーベーキューに行った。
広告製作の面白さが判ってきたころで、お金をためて買ったフィルムのEOS（一眼レフ）を使って食事そっちのけで撮影していた。それを気にした親戚の誰かが焼けた肉を私の口に入れてくれたりしていたが、日も暮れて夜になったころ、口に入ってきた1枚があきらかに生焼けだった。
忘れもしない、生肉の、あのぬるっと、ベロっとした食感。
いまや生食禁止となったユッケでさえ叩いてあるけど、焼肉なだけに、一枚つるり。子供のころ自分の舌を箸で挟んで遊んだ、舌を口中に含みなおすとこう、というアレに似た感触で「おえぇ～気持ち悪い！」と思った私はナゼか慌てて“飲み込んでしまった”のが運のつき。。。
中一日を経て、月曜の朝までは平気だったと思う。不調は会社で仕事をしていた時から始まった。
午前中だったと思う。おへそのあたりが痛い。なんだかぞわぞわするな？、風邪でもひいたかな、そう思っていた。
そうこうしてるうちに寒気がして、だんだんと吐き気もしてくる。土曜の夜呑んだビールで今頃二日酔いのはずもなく不思議に思う。
駆け出しの貧乏サラリーマンだった私は、お昼ごはんは近いところで温かい汁物でも食べようと近所の立ち食い蕎麦へ行った。
いざ食べはじめたころ、自分の足がガクガクと震えだした。立っていられず、たまらずしゃがむ。そのまま時間の経過とともに、ゆっくり、ジワジワ、確実に具合が悪くなっていく。立っていられない、という体験は当時、後にも先にも初めてでそれだけは鮮明に覚えている。きっとあのとき私の体内では菌が増殖活動のピークだったのかも。ぎゃー！想像したら今でも気持ち悪いぃ～！！
立っていられないくらいの体をひきずるように会社へ戻り、たぶんおなかを壊し、発熱もした。私をみた同僚が明らかに様子がおかしいと言うし、私もとにかく気持ちが悪くて目が回って何も手につかない。やむなく早退を申し出て会社の近所の病院へ。
どこの病院で、私をどのように診察して「サルモネラ菌」をみつけたのか、覚えていない。
あぁそうですか、ってな感じで飲み薬を貰って家に帰っただけで、入院のようなこともなかった。当時は若くて（アホで）何も知らなかったが、“親戚でバーベキュー”が原因だから、病院も「この人さえ治療すれば問題なし」と判断したのだろう。
今思い出したほうが本当に怖くて、真夏の怪談なみに背筋が凍る。病院に「サルモネラ菌」と言われても、何のことだかピンとこなかったのはシアワセだった。
おそらく「O-157（腸管出血性大腸菌）」なんてこの比ではないのだろうが、具合の悪さだけで比べればアニサキスなんてかわいいもんだった。好き嫌いの殆ど無い私も、ユッケはちょっと食べたくないなぁ、と思っていたが、自分でその理由を忘れていた。生肉は恐ろしくてとてもじゃないが食べられない。加熱をあなどるなかれ、菌は確実にいます。頭は忘れても体が覚えている、経験とはすごい。
皆さん、まだ暑い時期が続きますから。食べものにはくれぐれも、とうぞ気をつけてくださいね。
