仕事を通して、いろいろな会話やメールを交わしていると、会話って本当に難しいと日々実感。
商売としてとらえると「表現の工夫」とでも言わねばならないかもしれない。けれど、ここで言うのは「装飾的で、継ぎ足していく、盛る工夫」というよりは「適切な表現を、最小限の言葉数で、最善のタイミングで使えているか」というもの。
私の父は何かと厳しい人で、青春時代はガミガミガミガミ年中怒られていたが「言わなくてもいいこと」を言うと非常に怒った。
「思うことを素直に述べることと、言わなくてもいい一言を述べるのは全く別モノ。履き違えるなよ」とよく言われたし、ポロリと何か言おうものなら厳しく怒られ、拳が飛んできたことも少なくない。しかしたとえば、食卓で醤油をとってもらって「ありがとう」とつい言うと「そんな程度のことでいちいち礼を述べるな！」とも怒られたし、この境界線はとても微妙で、いい大人になった今でも言葉では説明しにくい。そんな父がもし今の（挨拶代わりにお礼を言うような）この時代に生きてたらひっくり返ったかもしれない。
こんな想い出話を語り合えた母も今年の夏に鬼籍に入り、すっかり寂しくなってしまった。父や母のことを知っている人達と話す時間に特別なありがたみと温もりを感じている。そんな折、飯島家の墓管理人として名義変更を行なったら、札幌のお寺から手続き完了の書簡が郵送されてきた。中にはPCで入力された形式的な一筆が入っていたが、よく読むと素敵な一言が添えられていた。
「札幌はようやく秋の気配。季節の変わり目ですので、ご自愛なさってご活躍ください。」有り難いナァ。
母が亡くなるまでお世話になっていた医師の方々へ姉と連名で手紙を書いた。そのうちのお一人からいただいた返事の中にあった一文。
「御母様とご家族の優しさを病室でいつも感じ、少しでもお元気になっていただきたいとスタッフ一同願っておりました。（中略）今後も私どもの治療を少しでも発展させるべく一層努力致します。」お医者様も、人間なんだよね。
あぁ、なんかしんみりしてきてイカンな。トシなのかなー。
話を変えて。
以前、アメリカ人らしき年配の男性が、白木で腰高の大振りな汁椀をデパートのバーゲンワゴンから取り出して購入していた。その品が手にしっくりと馴染んでいてとても素敵に見えたので、私も傷んできた夫婦茶碗と味噌汁椀を買いなおそうと伊勢丹の家庭用品売り場で選んだ時のこと。大振りな汁椀を選んでいたら店員の女性が不思議そうに「（こんな大きな椀で）どんな料理を召し上がるんですか？」と尋ねられたので「野菜不足を補うために、具がいっぱいのお味噌汁を食べるためですよ」と答えながら、大小の有田焼の飯茶碗と山中塗りの味噌汁椀を一そろい選び会計してもらったところ、簡易包装された食器を私へ手渡しながら一言。
「おいしそうな食卓が目に浮かびます。」頑張って料理するぞ～と気合が入る。
代々木駅東口は小さなY字路の割に交通量が多くて、毎日交通整理の旗を振ってくれる人が横断歩道に立っている。なかに一人、愛想のいいおじ（い）さんが居て、幼稚園の子供の団体と居合わせて横断歩道を渡ろうとした時の一言に笑ってしまった。
「さぁ～未来の総理大臣！どうーぞお渡りくださーい！！」
余計な一言を言うのは本当にカンタンだけれど、私もこうして、穏便で、かつ味わい深く、印象的な一言を残せる人間になりたいが、なれるだろうか。まぁ、日々けたたましくシャベクリ倒しているようでは、先は遠いけど。。
（飯島）
