性格を見直す前に、食べものを見直そう
ただでさえ忙しくてストレスいっぱいの勤め人時代に、組織の都合に振り回されたあげくに病死した父を見ていろいろ絶望して、2004年、起業して組織に振り回されない生活になった。快適だったけど根回しもなく始めたので暇だったし、花粉症にもなって、同時に発症した食物アレルギーは15品目ほどになり体調が悪かった。電車に乗れば目が回り、吐き気がして、数駅ごとに降りながら移動する。毎月の生理は大量の出血で重く、ひどい腹痛と下痢、貧血に悩まされた。振り返ってみればそれも当然で、それまでの食生活は最悪だった。朝食は食べずに仕事へ行き、昼にドカ食い。夜遅くまで何も食べずに残業してお酒を呑みに行き、深夜コンビニで買ったものを食べる。ろくに寝ないで活動していれば体も悲鳴を上げるはずだ、と今ならわかる。
そのころ、甘いものが好きじゃないんですと自己紹介したところ、栄養士の知人に「それはお酒で充分摂ってるからよ。足りてるだけです」と笑われて「そうか。体が求めていないものは、頭では好きだと思わないのか」と考えるようになった。
乳業メーカーの仕事が長かったので牛乳・乳製品の栄養や成分、からだへの影響などを学ぶ機会も増え、ある時、カルシウム摂取が不足すると骨を溶かすことを知った。そのメカニズムは、血液中に溶け込んでいるカルシウム濃度が薄くなると、それを補うために少しずつ骨から取ってくるというもの。この「骨貯金」がこわいのは、バランスを維持するために勝手に取り崩されることで、頭で自覚できないし見た目にも分からない。自分の体内で起きていることなのに把握できない。
たとえば炭水化物を抜く“糖質ダイエット”は、糖だけでなく食物繊維も摂れなくなるから影響は大きい。炭水化物は口中の唾液で分解できるので、胃に負担をかけずにカロリーが摂れるメリットがあるし、繊維と糖は腸内細菌のエサにもなるし、食物繊維は便のカサ増しに効いて健康な排泄に繋がる。
腸に負担がかかると肌が荒れたり風邪をひきやすくなるのはご承知のとおりで、たとえ美食家でも食事内容が偏っていると何かが欠乏する。人は欠乏している栄養素を摂るとおいしく感じるようにできている。たとえば酸味や苦味などが分かりやすくて、いつもよりおいしく感じたり、うまさが身に沁みるよう思えたり、一緒に食べている周りの人よりもべつだん感動するような場合は「足りてない証拠」かもしれない。
「あの人はいつもぎすぎすして、怒っている」そんな人が周りにいたら、その人は満たされない何かを抱えている。お金や仕事が理由かもしれないけど、そこには睡眠や休息の量、摂取栄養も大きく関係する。「ああいう性格だから」とかたづけてしまう前に、食べるものを見直すようアドバイスしてはどうだろうか。気分が塞ぎがちなのも、頭がすっきりしないのも、物忘れが多いのも、栄養不足の可能性がある。ちなみに私は他愛ない雑談を通して友人知人の「牛乳嫌い」を一通り把握することになったけれど、母を含め「牛乳は飲まない」といったほとんどの人たちがここ数年でみな病に倒れている。ほんとに驚いた。たんぱく質、脂質、ミネラル摂取に牛乳。飲んだ方がいいよ。
