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話し下手なのは、どうしてか

今では、話さないことには仕事が始まらないぐらいだけれど、若い時は「人前で話すこと」が苦手だった。

転勤で上京してきたばかりの1998年ごろ、上司の手伝いで大手OSの新製品パンフレットコンペのデザインディレクションを引き受けた。そのプレゼンの場で緊張のあまり、話すべき内容が全て吹っ飛んだ苦い経験がある。プレゼンが始まるやいなや、上司がとつぜん「では、ご説明はうちの飯島から」と言い出した。いい見せ場になるし好きにやらせてあげよう、という営業職らしい親切心だったが、補足説明ぐらいしか想定していなかった私はあきらかに準備不足で、え?ヤバい!と思った瞬間に頭の中が真っ白になった。

白くなった瞬間を今でも覚えている。「えーっと・・・」静まり返った場の中で、いつまでたっても言葉が出てこない私。デジタル用語辞典を片手に分厚いホワイトペーパーを読み込み、なぜこのビジュアルかを社内でけんけんがくがくと3週間もやったのに、自分はどうしてこれを作ったのかすら言えなかった。焦った上司が横から助け舟を出したが既に遅しで、ぽつりぽつりとしか言葉にならず、まるで説明にならなかった。

 仕事で「人に何かを伝える」ことはどんな場面でも欠かせない。しかし「話す」というのは手段で、肝心なのは「話す内容」である。内容を理解していないと話せるはずもなく、だからこそ「自分は話すのが下手だから苦手」という人は「何を話すべきかを理解できていないことが多い」ともいえる。業務で話すこと、というのは組織の意向とか、物事への解釈や確認などがほとんどなので、ザックリいうと「代弁」みたいなもの。だから事象の整理というインプットをしておかないと「話し」に転嫁できない。しかも言葉というのは体の中を通って出てくるので、内容が不正確でもその自覚がなければ、発声は「正しいこと」に聞こえがち。なので逆に「つっかえるのは話下手だから」と思ってしまうが、決してそうではないし、ペラペラ喋るやつはむしろうさん臭いとすら思う。

自分で考え決めたことを自分の意志で話すのはそう難しくない。当時の私の失敗も、製作物の細かい作りこみに気を取られ、プラン全体を咀嚼しないまま終わった気になったから言葉が何も出なかったのだと今なら思う。 

では内容の理解はどうするか?これが肝心で、周囲の、特に先輩の力が必要だ。部下がいつまでもトンチンカンで困る、とぼやく人ほど、けっこうな確率であなたの説明も足りていない。

いま、仕事に入る前に事前オリエンできている組織はどのくらいあるだろうか。いきなり「さあやってみろ」は難しいケースも多い。ましてや、メールやチャットが完全に主流になり、会話がさらに簡素化されてきている。そして業務は細分化され、職場と雇用主が別というのも珍しくないから、仕事の全体像も見えにくい。怖ろしいことに、自分の仕事を根本的に理解しないまま働いている人も増えた。だからこそ「理解するために必要なことを聞く」ことを丁寧にやる習慣は重要だ。質問内容は頭のよしあしが露呈するもの。だから、仕事のスキルを積み上げる前の土台部分を固めるためにも、まずは「話せる」ように人を育てなくては。

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