国内で作られたものを選ぼう
久しぶりに家電量販店へ掃除機を買いに行った2017年のこと。そこに並ぶ製品は見渡す限り海外製で、なじみのある国内メーカーはほとんど無かった。事業を手放すとか、サービスを止めるとか、千人単位で希望退職を募るとか、ここ何年もずっとそんなニュースを耳にしてたから不思議ではなかったけれど、景気がいい実感がない、という理由のひとつがここにあると思う。
日本は、かつてのものづくりのノウハウや実績を手放し「海外のいいものを必要に応じて買えばいい」という考えに移行していった。でも完成品を仕入れて売る商売なら、手数料や販売マージンのような上澄みしか実入りがない。今やそのマージンすら確保できないことも多いと思う。例えば外国製10万円の商材が月に100個売れて1,000万円の売上ができても、その売上金1,000万円は日本を通過し本国でかかる製造コストとの収支になる。もしも10%のマージンが確保できていたとしても満額で100万円。この100万円で日本の営業所を構え、雇用し、持続させるなんて無理。働く人も、やってることは同じでも動くお金が小さいと苦しい。
でもこれが日本製のものだったら?工場がある、土地の使用料も払う、部品も作るし、工場で働く人も雇う。お昼休みのお弁当屋さんも要るし、1,000万円の売上を支えるコストがあちこちに影響していく。儲かればボーナスも出るかもしれない。お金は天下の回りもの。何かを買うときに迷ったりどれでもいいなと思った時こそ「国産品」を選んでみてはどうでしょう?
そう思ったきっかけは、NTTドコモが流すiPhoneのCM。「(娘が)使ってくれてるから(父に)教えやすい」をみたこと。なんというみみっちい動機付け。世間のウェブサイト集計ではモバイルの6割以上がApple製。私はDTP仕事で25年前に初めてApple製Macに触れたが、Apple製品は汎用性が低くて使いにくく、素人向けの大衆機ではない。にもかかわらず、なぜか日本のスマホ市場では大人気。うらやましいことにAppleは囲い込みにもブランディングにも成功しており、売れてしまうんだから仕方がない。
しかしNTTドコモはどうだろう。彼らは従業員から役員までヒトはもちろん、通信技術から基地局のアンテナを立てる物件までオールジャパン由来で、日本あってこその企業。なのに老人のスマホデビューの後押しに、国産メーカー品を支援するプランをなぜたてないのか。どうせApple製品の取り扱いに出遅れたのだから、独自路線を行くべきなのに。毎月みんなのお財布から自動で利用料がじゃぶじゃぶ入ってくるせいで、資金調達の苦労も無いし、弛緩して伸び切った慢心だな。もう少し工夫はできないものかなぁ。
この原稿を書き終えたあと、ドコモ口座で他人の利用料を引き落とされる被害や、問い合わせしても相手にしてもらえなかったこと、そしてNTTの完全子会社になる報道が出た。関係者の中ではそれなりの評価だったんだね。うるさい親がつく子会社化、いいニュースだと思う。
迷ったときはまずは日本製を。経費を使ってくれるかもしれないし、再就職や転職先が増えるかもしれないし、それは将来の子供たちが働く企業のひとつになるかもしれないのだから。
追記:2022年に12年使ったSANYOの全自動洗濯機が壊れてまた量販店へ。「国産メーカー製」でかつ「国内工場生産」のものは全ラインナップ中の1/10もなかった。。空洞化はこのままもっと進むのか。。。
